俺だけLvアップな件-シユキのつぶやき-

俺だけLvアップな件を熱く語ってみんなに広めたい!!

第89話 旬の強くなる理由とは・・・?

美濃部ハンターが白川社長に向かって言う。

「大虎さん、面白い話があるんですけど聞きたいですか?」

 

しかし、白川社長は飲みながら

「いや、いい。」

と言う。

 

笑いのセンスを含め、剛はどこかおかしな野郎だ。

 

世界で初めて四肢(両手足)がそろってるうちに引退したS級ハンター。

世界で初めてではなく、この世で唯一と言うべきか・・・。

 

あの高額な報酬に揺らがない人間はそうそういないはずだ・・・。

 

家が裕福なわけでもない。

 

美濃部ハンターが心配そうに

「大虎さん本当に行くんですか?」

と聞くと、

「おう。」

と白川社長は答えた。

 

しかし、何か伝えたそうに・・・

「颯樹(ふうき)さんが死ぬところを見たのに?」

 

白川社長は

「だから行くんだろ。アリをいつまでも好きにさせてるとそのうち日本中がああなってしまう・・・。」

 

何度も心配そうに言う美濃部ハンター。

「いつからそんな愛国者になったんですか・・・。」

 

白川社長は

「どうせ行くしかないからそれっぽいこと言っといた方が恰好がつくだろ。」

 

美濃部ハンターは

「俺は行きません絶対に。説得しに来たのならあきらめて・・・・。」

と途中で白川社長がしゃべると

 

しかし白川社長はそんな美濃部ハンターとは裏腹に

「いや、挨拶しに来ただけだ・・・・。

 

もう会えないかもしれないからな。

 

 

美濃部ハンターが寂しそうに続きを言う。

 

 

白川社長は不思議そうに

「公務員試験?」

 

美濃部ハンターが答えた。

「諸菱建設が強いハンターを集めてギルドを作ろうとしてるんじゃないですか。俺も連絡貰いました。ギルドマスターにならないかって・・・。

 

諸菱建設だけじゃありません。引退後いろんなとこからおいしい話をもらったんです。

 

だけど俺・・・

 

ダメなんですよ。血とかそういうの・・・。

 

だから・・・公務員になるんです。日本史くらいしか自信ないからヤバいですけどね。」

 

 

「日本史が得意なのか・・・。」

と美濃部ハンターにお酒を注ぎながら白川社長が聞きなおす。

 

「俺って時代劇がすきじゃないですか。」

と言うと

 

白川社長はよくわかっておらず、

「なんだそれ。」

と言う。

 

改まって美濃部ハンターが

「でも、これが普通ですよ。戦争は歴史の中だけで十分です。」

 

この言葉に白川社長も同感だった・・・。

 

普通じゃないのはハンターだ。

 

白川社長がこう考えていると一つ思いつく・・・。

 

そうこう考えていると美濃部ハンターが

「飲め。お主も悪よのぅ・・・。」

と言って白川社長を笑わそうとしていた・・・・。

 

 

とある病院にてー

 

旬が母親の病室を窓から侵入していた・・・。

 

一か八か・・・

 

命の神水を飲み込むことができないかもしれないし、呑み込めても何が起こるかわからない・・・。

 

 

だけど・・・

 

これまでに何度もシステムが起こした奇跡を見てきた・・・。

 

話したところで誰も信じてくれなさそうな話。すべてはシステムの力だ・・・。

 

 

E級だった俺がここまで来れたのも・・・

 

 

信じてみよう・・・。

 

しかし震えて思うように飲ませることができんかった・・・。

 

旬は一呼吸し、命の神水を母親の口の中へと入れた・・・。

 

 

頼む・・・

旬は何度も何度もシステムにお願いをしていた・・・。

 

 

この痕・・・

 

母さんの髪を洗ってあげたかった・・・。

 

でも戦闘にも数回しか行ったことの無い幼い旬には、湯加減の調整がうまくできなかった・・・。

 

そう・・・旬は母親に熱湯をかけた・・・。

 

母親は避けると葵にあたる・・・そう思った母親は微動だにせず、すべてを自分の体付止めた・・・。

 

俺がヘマをしたのに・・・俺のせいでやけどしたのに・・・・

 

「旬大丈夫?火傷しなかった?」

と優しく言う母親・・・。自分の火傷よりも旬のことを心配する母親だった・・・。

 

幼心にこっぴどく怒られると思っていた旬は、あの日の記憶・・・そしてあの時の母親の言葉を片時たりとも忘れたことはなかった・・・。

 

誰にも借りを作ることはなかったが・・・母親だけにはとても返しきれないほど大きな借りを作ってしまった・・・。

 

顔に血色が戻って来たけど反応がない・・・。

 

 

お願いだ・・・

 

目を覚ましてくれ!!

 

 

強くなろうと戦ったたった一つの理由・・・。

 

早く起きて・・・。

 

 

旬は何度も母親が起きてくるのを願っていた・・・。

 

自分が強くなろうと決めた理由がまさにこれだったからだ・・・。

 

 

 

 

背負ってるものを・・・

 

俺に託してくれ!!

 

 

 

「母さん・・・。」

 

 

 

 

旬のアパートにてー

 

勉強している葵・・・。

「集中できない・・・。」

 

そういって外に出る葵・・・

「今年もまた夏が来るのね・・・。

 

風が温かい。」

 

 

病室にてー

旬は顔を下げ、ずっと願っていた・・・。

 

窓から侵入したのか、病室に風が入る・・・。

 

カーテンで母親が隠れるほどだった・・・。

 

 

その時ー

「旬・・・なの?」

 

カーテンが元に戻り顔が見える・・・。

 

「お母さん・・・どれくらい眠ってた?」

 

旬が答える・・・。

「四年・・・。

 

四年も・・・。」

 

旬の母親が驚いていた・・・。

「えっ?

 

 

葵は?

 

 

葵はどうしてる?」

 

 

 

涙をこらえながら旬は

「元気にしてる・・・。」

 

 

 

この言葉に母親は・・・

「ありがとう旬。

 

約束守ってくれたのね・・・。」

 

 

母親はお使いを頼むかのように”もしも母さんがこのまま目覚めなくなったら、あなたが葵を守ってやってね。””もしも母さんがこのまま目覚めなくなったら、あなたが葵を守ってやってね。”

 

このお使いがあったから耐えてこれた・・・。

 

恨んでなんかいない・・・。

 

旬は母親が背負っていたものを代わりに引き受けただけ・・・。

 

しかし、すべてお見通しと言った様子で手をギュッと握る母親がいた・・・。

 

 母親の話が続く・・・。

「こんなに傷まみれになって・・・。

 

旬・・・つらかったでしょ?」

 

旬はなんでもないように笑って見せて、母親を安心させたかった・・・。

 

しかし、そうはできなかった・・・。

 

こらえていた涙が頬を伝って流れ落ち、唇が自然と開いた・・・。

 

「・・・うん。」

 

 

感想

マジ神回!!

ここは本当に泣けますよね・・・。

 

旬が強くなろうと思った理由が母親を起こすこと・・・。

 

今まで悪魔の城を頑張って進めたのはまさにこれがあったからがんばれたんじゃないかなーっと思います。